街中や観光地でスケッチしている人を見かけて、「素敵だな……」「自分もやってみたい……」と感じたことがある方は多いのではないでしょうか。
でも、「美術は苦手だったし、自分には難しいかも…… 」と思って尻込みしている方もいるかもしれません。
スケッチに色を入れて始めやすいのは水彩画です。まるで写真のように描くのは簡単ではありませんが、水彩の軽やかな特長を活かして、自由に伸び伸びと描けるのが水彩画の楽しいところです。
そのうえ、水彩画は少ない道具ですぐに始めることができるのです。 絵を描くことを趣味にしたい方はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
今回は、初心者の方もできる水彩画の基本と始め方について紹介します。
\ 三原色の透明水彩絵の具で描く水彩画 /
まずは水彩画に必要な画材をそろえよう
水彩画を描くにはいくつか画材が必要です。ここでは水彩画を描くときに使う5つの道具を紹介します。
水彩絵の具
水彩画につかう画材のメインとなる水彩絵の具には、透明水彩と不透明水彩の2種類があります。
2種類の絵の具はほとんど同じ成分ですが、塗ったときの仕上がりが大きく異なります。これは、色の元である顔料と顔料を紙に密着させるための樹脂の比率が違うためです。
透明水彩は樹脂のほうが多い絵の具なので、塗ると下の色や紙の色が透けて見えます。淡い色合いに仕上がりやすい絵の具なので、にじませたりぼかしたりして奥行きのある絵を描くことが可能です。
一方で不透明水彩は、樹脂よりも顔料の割合が多い絵の具で、下の色を覆い隠します。厚塗りに適しており、発色が良く、はっきりとした仕上がりになります。イラストを描くときなどにおすすめです。
筆
筆の穂先に使われている毛には、硬毛と軟毛の2種類があります。水彩画を描くときは、主に軟毛を使うのが一般的です。柔らかい毛のほうが水分となじみやすく、濃淡をきめ細かく表現することができます。
大きいものを描くときは大きめの平筆、小さいものを描くときは丸筆を使うのがおすすめです。描くものの大きさで筆を使い分けると、細かく表現できて上手に描けます。
また、筆は同じものを何本か用意しておくと、その都度洗う必要がないので効率良く作業を進められます。
パレット
絵の具を出すパレットは、アルミ製またはプラスチック製のものを使うことが多く、絵具にセットで付属しているパターンもあります。使いたい色の数によって、仕切りの多さを決めると良いでしょう。
アルミ製のものは混ぜた色が見やすいので透明水彩を使うときにおすすめです。プラスチック製は、軽いので気軽に使うことができます。また、落としても変形しにくく、丈夫なのもメリットです。
アルミ製でもプラスチック製でも、使い勝手はそれほど変わらないのでどちらでも構いません。
水彩紙
水彩画を描くときは、水彩紙を選ぶことも大切です。水彩紙はサイジングというにじみ止め加工がされています。絵の具がすぐに染み込まないため、にじみやぼかしなどをきれいに表現できます。
水彩紙にも種類があり、目の粗さや厚み、吸い込みなどが異なります。さまざまな水彩紙が入ったポストカードパックも販売されているので、自分に合ったものを探したい方は使ってみてください。
筆洗
水彩画は、筆を洗って整えながら絵の具の色を変えて描くため、筆をきれいに洗うための筆洗が必須です。
筆洗は、3つ以上水を入れるところがあるものを使うと良いでしょう。洗う部分とすすぐ部分など、場所ごとに用途を分けて使うと筆をきれいに保てます。
筆洗とパレットは500円前後ですが、絵の具の金額はグレードやブランド、色数によって大きく異なります。
12色セットのものでもおおよそ3,000円前後かかるので、ほかの道具を合わせてすべてそろえると5,000円前後になることを見込んでおくと良いでしょう。
\ 三原色の透明水彩絵の具で描く水彩画 /
【水彩画の描き方】基本的な流れを確認しよう
水彩画は描き手が自由に描くのが大前提です。とはいえ、描くときの基本的な流れに沿うとスムーズに描けます。ここでは、水彩画の基本的な描き方を紹介します。
下描き
描く題材が決まったら、鉛筆やシャープペンシルで下書きしましょう。濃く描くと絵の具の色と鉛筆の色が混ざってしまうものの、薄すぎても色を塗る範囲がわかりづらくなります。絶妙なバランスで曖昧にならない程度の濃さで描くのがポイントです。
濃く描いたあとで、練り消しを使って線を薄くするのも良いでしょう。着色しやすいように下描きはしっかり描くことが大切です。
下塗り
下塗りは必須の工程ではありません。題材によっては下塗りしてもしなくても問題ないため、この工程を省くことも可能です。
下塗りをするかしないかは、背景の有無などを踏まえて判断するのがポイントです。
背景に物を描きたい場合は、下塗りをするとごちゃごちゃした印象になる可能性があるので注意が必要です。背景に物を描かない場合は下塗りをすると華やかになります。
下塗りをするときは彩度または明度を統一するのもポイントです。また、2~3色以内に収めると色がまとまりやすくなります。
色を塗って仕上げ
下塗りが終わったら、いよいよ着色に入ります。濃い色を塗ったところを後から薄くするのは難しいため、色を塗るときは薄い色や明るい色を先に塗り、濃い色や暗い色をあとから塗っていくのがポイントです。
色を塗ったら、最後に鉛筆やシャープペンシルなどを使って、絵の輪郭をなぞって仕上げましょう。
【水彩画の技法】表現の幅を広げよう
ここまでで水彩画の基本的な描き方を紹介しました。基本的な描き方に専門的な技法を取り入れると、より洗練された水彩画になります。ここでは、表現の幅を広げるための水彩画の技法を紹介します。
ウォッシュ
ウォッシュは平塗りのことを指し、同じ色をムラなくベタ塗りする手法です。濃淡をつけずに同じ濃さで塗ることは意外に難しく、上手に塗るには筆に含まれる水分の量を調節しなければなりません。
多すぎるとシミができてしまうので、適量の水分を含ませた筆で手早く塗ることが大切です。
ウェット・イン・ウェット(にじみ塗り)
多量の水を含ませた絵の具もしくは水だけを最初に塗っておき、乾く前にその上に別の色をつける手法です。にじんだりぼかしたりして、美しいグラデーションをつくります。
どのようににじんでいくのか、あえてコントロールせずに自然の美しさに任せるのもひとつの方法です。
ぼかし
ぼかしは、色を塗ったあと、乾く前に水を含ませた筆でなぞって境目の色をぼかすことです。
塗った部分に水が混ざることでグラデーションも表現できます。そうすることで境界線がぼやけるので柔らかくふんわりとした印象を与えることができます。
ドライブラシ(かすれ)
ドライブラシは、ウェット・イン・ウェットとは逆に、水をつけていない筆に絵の具をつけて描く手法です。固くてゴツゴツしたものを描くときや、動物の毛並み、草などの細くて細かいものを描くときに向いています。
筆の動かし方によって、さまざまな質感を表現することができ、マスターすると表現の幅が広がるでしょう。
\ 三原色の透明水彩絵の具で描く水彩画 /
まとめ
水彩画は日常のちょっとした風景や豊かな自然を色鮮やかな作品に残すことができます。テクニックを覚えると、より細かく表現できるので、水彩画のレベルも格段にアップします。
また、水彩画を始めたい方や、まだ始めたばかりの方 は「三色の絵の具で生み出す、豊かな樹木の水彩画」と「三色の絵の具で広がる、美しい空の水彩画」のレッスンがおすすめです。
3色の絵の具だけを使うので、何色を使うのか迷うことなく気軽に始めることができます。水彩画で自然の豊かさや美しさを表現したい方は、ぜひLakitのレッスンをチェックしてみてください。